8/10 私見・福北の将来像2.空港と港湾


 だいたい週一回のペースで福岡・北九州地域の将来像を自分なりの知識に基づいて述べています。あくまで私見ですので、目くじらを立てずに軽い気持ちでお読み下さい。何しろこのコーナー、「言いたい放題」ですから。

 福北都市圏には二つの空港があります。福岡空港と北九州空港です。その利用状態たるや歴然とした差があり、福岡空港は報道にもあるように恒常的な過密状態(乗降客数約2000万人、飛行機発着回数約14万回・H12年度)。対して北九州空港は霧が多いという気象状況もあってか、年間利用者が20万人にも満たない(乗降客数約12万人・H11年度)という惨憺たる状態です。
 そもそも北九州市が栄えた一因に、交通の要衝であるという事実がありました。港湾面では関門海峡を背後に控え、鉄道では小倉・若松駅を中心として石炭運搬に栄えました。その地位が揺らいだのは道路網の発達と空港整備の不足でした。
 関門トンネルと関門橋の開通は、この地域を重要なポイントから通過点へと変貌させました。現在九州の交通の要衝は門司ではなく、鳥栖であるといえるでしょう。また福岡空港はその都心部への容易なアクセスによって、九州最大の空港へ成長していきました。北九州空港は、昭和57年にいったん休止状態に陥りました。地域の斜陽化がその利用数に影響を与えたと言えなくもないですが、空港を積極的に利用したという形跡が見られないのも事実です(そもそも北九州地域は福岡に比べ鉄道の便利が良すぎると言うことも問題と言えます)。
 福岡は空港の利便性を十分認識していたと言えます。空港までの都市高速の整備はいち早くなされましたし、空港周辺の駐車場整備も周到でした。また今回の様な過密状態に至ると「新空港」がいち早く構想に挙げられるのは、自明の理と言えるでしょう。
 ただし、今は不景気、行政支出の抑制が叫ばれている時代です。
 新福岡空港の候補地として新宮・津屋崎沖が挙げられていますが、たとえそれが糸島沖であっても、奈多沖であったとしてもどちらも本来海上空港には適していないのです。これらの候補地は波が荒いことで有名な玄界灘にあり、当然建設費も余計にかかります。一説によると交通アクセスなどの整備費を含めれば2兆円はかかると言われる(公称・予想整備費8000億円)一大プロジェクトです。確かに、福岡の発展を今ほどに維持したいのならば、空港を手放すことは致命傷になりかねませんし、今の状態では手狭なことも事実です。それでも用地拡張やターミナル整備などの改善の余地はあるのではないでしょうか(新空港より整備費はかからないでしょうし)。
 新北九州空港の将来は、見た目では希望ばかりに見えます。つい先日利用客数の訂正が行われましたが、それでも年間約280万人の利用(開港五年後を想定)は、現在の20倍に当たる数値です。交通アクセス・軌道系の整備が行われれば、その利用客数はますます延びるものと思われます。内海に位置しているので、波風による影響も少ないでしょう。建設費も1000億円以下(公称・約780億円)と安く済みます。仁川市と北九州市が姉妹都市の提携を結んでいることを考えると、もし韓国の仁川国際空港がアジアのハブ空港となったとき、新北九州空港は日本でもっとも使いやすい空港となる可能性も秘めています。
 しかし私はこの空港に警鐘を鳴らしたいと思います。何しろ今まで空港対策に後れを取っていた北九州市です。せっかくの宝を持ち腐れにしてしまう可能性があります。空港セールスにうまくいかなかったり、交通インフラの整備が遅れるだけで、イメージはがた落ちします(代表例・ドルフィン蔚山号)。せっかく得ている地の利と天の時(読売新聞西部本社・ものがたり新北九州空港2002/1/17〜24参照)を無駄にしてはならないのです。
 
 話を港湾事業の方に移したいと思います。こちらの方は北九州・福岡に空港のそれほどの差は付いていません。
 最近コンテナ輸送による外資取扱貨物量が博多港が北九州港を上回ったという記事が経済面をにぎわせましたが、全体の貨物取扱量では4135万3千トン(博多)に比べ9630万トン(北九州)とその差は今だかなりの開きがあります。もっとも、北九州側には関門海峡という自然条件が付いている(さらに博多側には福岡空港からの貨物便も加わる)ので、一概にこの差を比べるのも無理があると言えるでしょうか。
 ここでも福岡側では人工島にて港湾施設を建造中であり、対する北九州でも国内初の外資系PFI導入によるハブポートを響灘側に建造中です。ここで大事なポイントはそれぞれの港湾設備の棲み分けであると言えるでしょう。もっとも、これは空港のそれについても言えることですが、元々博多港には商業港として必要不可欠な役割があり、北九州港には工業都市として不可欠な港湾設備が必要です。つまり、どちらもそののり(則)を超えなければ、共存は可能なのです。ただ、過去の栄光を少しでも取り戻したい北九州側と九州の中心としての力を維持したい福岡の間で調整を行うことは非常に難しいと言わざるを得ません。希代の調整役の登場を待ちたいと思います。
 
 今回の私見には主に以下のサイトにある資料を用いました。
 http://www.pa.qsr.mlit.go.jp/(九州地方整備局 港湾空港部)
 http://www.pa.qsr.mlit.go.jp/hakata/(博多空港港湾工事事務所)
 http://www.kitaqport.go.jp/(北九州空港港湾工事事務所)
 
 次回は「商業地域」について述べてみたいと思います。
 


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