10/24 企業合併が北九州に与える影響


 近年、市の内外で事業統合・企業合併が相次いでいます。これらの中で今回はいくつかの例を挙げ、北九州市に与える影響をプラス・マイナス両面から見て考えたいと思います。


 まず近頃相次いで報道された金融業界の大型合併から考えてみましょう。
 北九州・京築・直方の五信用金庫が合併を発表したのはつい先日のことでした。「福岡ひびき」・「直方」・「新北九州」・「門司」・「築上」の各金庫の合併は、かねてから既定路線ではないかと言われていましたが、こんなに早くの合併となったことは私自身も驚いています。思い出してみれば、この前段階であった北九州八幡信用金庫と若松信用金庫の合併(2001年11月)時に「当面は両金庫の融合と効率性の向上に努める」と言うような主旨の発言を報道機関から聞いた様な気がしますが、そんな状態を許さないほど状況は緊迫したと考えるべきなのでしょうか。それとも、この時期自体も既定の路線だったのでしょうか。
 後から考えると、この存続金庫である「福岡ひびき」と言う名前には少々のからくりがあることが分かります。まず、「ひびき」という名前は市が意図しているかいないかはともかくとして、最近やたらと多用されている地名です。(その上に「福岡」がついたのは、響という名前が某ウヰスキーブランド名に引っかかった事から窮余の手段としてとってつけられた名前だそうです。)
 ここで考えるべきは、なぜ「福岡」でなく「北九州」と付けなかったのか、と言うことです。私はこれには今後の方針が見え隠れしていると考えます。合併後、「福岡ひびき信用金庫」は市の指定金融機関になるため準備が進められる、との記事を見かけました。恐らく、市からは指定金融機関との交換条件として「銀行昇格」を要請するのではないでしょうか。そのとき、「旧五信金の一体感を出すため」云々などの理由で銀行名はひびきではなく、「北九州」となる。私はこうにらんでいます。
 いずれにせよ、企業が生み出した資金を保管するべき「寄る辺」である銀行が誕生することは北九州市にとってまさに喜ばしいことであると言えますが、より激しい金融競争が起こる危険性のあることも間違いないでしょう。せっかく銀行ができても他校に吸収合併されてしまうと話にならないですし。


 話は変わりまして、新日本製鐵と住友金属の資本提携は北九州市にとって慶弔相半ばする出来事であると言えます。資本の提携により企業同士の安定度が増したことはそれ自体は喜ばしいことですが、同時に起こるであろう人員削減は避けられないことと言えます。
 北九州市には新日鉄八幡製鉄所と住友金属小倉の両工場があります。現在大分から銑鉄を供給して貰っている八幡製鉄所が効率化のためにそれを小倉から供給して貰う、と言うシナリオは当然考えられます。神戸製鋼所もこのグループに加わるという報道がありましたが、神戸製鋼は門司に工場を抱えています。全面提携という話になれば、北九州市の響灘側にはひとつの会社の巨大製鐵工場群が並び立つことになるのです(日本製鐵時代の昔に戻る、と考えればあまり当たり障りが無くなるわけですが)。このようにひとつの会社がますますしないで影響を持つことになれば、その会社の趨勢が市全体に影響を与えることになります。いわゆる「君津ショック」や「合理化ショック」が再び起こる危険性が大きくなるわけです。再び企業の寡占状態が都市単位で起こる(しかも本社が都市内にはない)ことは、その都市にとって必ずしも良いことは言えないのではないでしょうか。そのため、この出来事は「慶弔相半ばする」と考えてしまうのです。


 目立たないところでは、丸食・福岡丸食・北九州丸食(ともにグループ企業)の合併でサンリブができたこと。とナフコと深町家具店(両者とも本社・北九州市)という二つの関連会社の合併により西日本最大級のホームセンター企業が誕生したこともここ最近のことです。
 両者は現在の九州地場流通業の中でも上位を占める売り上げを誇る企業となりました。私はなにも「数が全て」と言うつもりはありませんが、やはり企業規模の拡大は都市の安定に繋がるのです。また、企業の社会貢献により都市文化が発達することも期待できます。
 ただ、この流通業に関しては「ユニード」、「寿屋」、「ニコニコドー」、「岩田屋」などの例を挙げるまでもなく、統合・淘汰が激しい産業となっています。現在の北九州地場産業が十年後、二十年後先も同一の地位を占めているとは限りません。予断を許さず、見守っている必要性があるかと思います。



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