10/24 私見・福北の将来像 6.鉄道・バス事業


 福岡・北九州地域の将来像を自分なりの知識に基づいて述べてみようと思います。あくまで私見ですので、目くじらを立てずに軽い気持ちでお読み下さい、、、本当の意味で「言いたい放題」になりますね。今回、特に事情を知らない方に不親切に作ってあります。とりあえず、拙著北九州地域史・鉄道事業編を最低限読んで頂けることをお薦め致します。
 どうにも研究活動の方が忙しく、今回でこの連載はいったん休止に致します。コーナー自体の展開としては、新たなニュースが報道される度に気が向けば特集を組む程度にしたいと思います。ご了承下さい。

 鉄道・軌道・新交通システムに関する考え方とその発展過程において、福岡市と北九州市のそれはかなり異なった過程を踏んで現在に至っています。以前北九州市の交通史については鉄道・軌道のそれを中心に述べていますので、今回は福岡市との比較を重点に置いて考えてみたいと思います。
 福岡市はその中心が福岡・博多の二点地域に集中した構造を古くから持っており、当然この二地域の交通手段として軌道系交通が発展しました。また、鉄道導入以前からの市街地が北九州地域に比べ非常に大きなものであったため、鉄道路線自体が市街地からかなり離れたものとなってしまいました。このため、軌道系交通は北九州のそれと異なり、都市内交通の主力として発達していきました。福博(福岡・博多の総称)はその中心地に網目のごとく路面電車が発達しました。これは裏返して言えば、両地域間を鉄道が結ぶことができなかったことを意味します。都市が分散していた北九州でJRが主力交通として活躍している理由はこのことからもよく分かることだと思います。
 福岡市が路面電車に変わる交通手段として地下鉄を導入することに決めたのは、その都市核間の距離にあったと言えるでしょう。北九州のモノレールは計画路線を除くと、昔も今も郊外交通の補助機関ですが、福岡のそれは博多−天神−西新というある程度の規模の都市核を結ぶ基幹交通なのです。モノレール以上の輸送人員とスピードを必要としていたわけです。ただし、それに比例したコストがかかっているのは、現在も黒字路線がないことからよく分かるのではないでしょうか。地下鉄とモノレールという決断の分岐点は都市核の距離と主力輸送機関の違いにあったと言えます。

 さて、話はバス事業に移しますが、福岡・北九州両都市を一手に握る日本一のバス事業者と言えば、西日本鉄道です。この会社自体は戦時中の合併政策によってできたものであり、もしこれが行われなければ、広島のようなバスの競合が行われてはずだったのです。現在、この一社独占とも言うべき状態は、両都市間の融合に一役買っているのではないかと思います。
 とはいえ、北九州と福岡のバスに対する位置づけは多少異なります。福岡市、特に天神地区ではまさに「バスが湧いて出る」状態になっているほど、バス運送に頼りっきりの状態が路面電車廃止時から現在も続いています。対して北九州ではJR駅が各地域核中心部にあるため、中心部でバスが混雑することはあまり多くはありません。ただ、バスがカバーしていない(もしくは少々バスで行くには不便な)地域も多いため、車が多いことが問題視されています。これらは先程から述べているとおり、都市核間の距離と密度にこの様な差異が生じた原因があると言えるでしょう。
 ついでに述べてみますが、西鉄の100円バス事業という画期的アイデアは福博路面電車の市内循環線が無ければ考えつくことはできなかったのではないでしょうか。画一料金・路線設定は路面電車の伝統から受け継がれたものと言えます(現在も路面電車の料金設定の名残が福岡220円特殊区間に残っています)。
 このように、かなり乱暴に福岡市の鉄道・バス事情の歴史的要因を述べてみましたが、簡単に現状を述べると、福岡市は地下鉄と西鉄(バス・電車両方)を主軸にして交通を発展してきましたが、北九州はJRと道路網(都市高速と主要国道)とで都市内交通需要をまかなっています。
 今後の展開を考えてみると、福岡市はJR(筑肥線・福北ゆたか線)、または西鉄宮地岳線を利用した発展を指向すると考えます。地下鉄事業の推進に関しては、現三号線の天神−橋本間の着工まではこぎ着けましたが、それ以降の青写真を示すことが無くなりました。フォーターフロントや博多駅への三号線乗り入れがどうなるのか、アイランドシティへの地下鉄乗り入れに関しても、未定なままです。おそらく、景気回復を待たない限りこれら計画が動き出すことはないのではないでしょうか(個人的には、九州新幹線全面開業までには三号線の博多駅乗り入れを実現させて欲しいと思います。駅舎改築と期を同じくすることができるからです)。バス事業に関しては現状維持が考えられますが、今後の道路行政の展開(自転車専用道の整備など)によっては自転車などの交通手段へのシフトもより強くなるかもしれません。
 北九州の方はよりJR依存が強くなることは間違いないでしょう。新空港への乗り入れ、洞海湾横断鉄道、新駅の開設etc、、ただ、JRの軌道がない地域では、特に学術研究都市やハブポート方面に新交通システムの導入があっても良いかもしれません。バス事業に関しては、西鉄の子会社運営になった時点であまりドラスティックな変化は期待しない方がよいかと思います。むしろ、第一交通産業などが行うであろう、福北間の中長距離バスに期待が集まると考えられます。

今回、参考URLを紹介しづらいところが数多いので、書籍の紹介に留めたいと思います。
以下の書物の他に「福岡市史」や「福岡県の歴史」、あといくつかのURLを多少参考にしています。

・北九州市産業史 H10・3
北九州市産業史・公害対策史・土木史編集委員会産業史部会
北九州市
・北九州市土木史 H10・3
北九州市産業史・公害対策史・土木史編集委員会土木史部会
北九州市
・博多チンチン電車物語 H11・7・30
平山公男
葦書房



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